活動経過

(1)5月20日  研究会『在日』をめぐる状況は変化したか
(2)8月25日研究会「〜どう考えどう取り組むか 『特別の教科 道徳』と人権教育(パートⅡ)〜」
(3)3月30日 会「〜再び『障がい』とは何かを考える〜」

5月20日 研究会

5月20日 研究会の報告

【案内文】2018.5.20研究会のお知らせの詳細LinkIcon

テーマ:『在日』をめぐる状況は変化したか

○開催日  : 2018年5月20日(日) 13:00~17:00
○場 所 :  大阪人権博物館(リバティおおさか)

 「在日」の子どもたちを取り巻く状況は今、どうなっているでしょうか。かつては無かったヘイトスピーチ(差別扇動)やネットでの差別が、子どもたちに与える心理的打撃は、計り知れないものがあります。
戦後、辛うじて存在した国籍や選挙権も、強制的に剥奪し、正しい歴史認識の教育はなされずに来ました。今日もその延長上にあると思います。
 露骨な差別をむき出しにしたヘイトスピーチを止まらせる法律(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)が、ようやく2016年に出来ましたが、はたして強固な基盤の上にあるのでしょうか。
 今回は、在日の運動について世代の異なるお二人にお越しいただいて、在日の過去を振りかえりつつ、現在の「在日」の子どもたちが直面せざるをえない課題、日本社会が向き合わなければならない課題について提起していただきます。
万障お繰り合わせのうえ、ご参会くださいますよう、お願い申し上げます。

<第 I 部> 報 告
報告1:「ヘイトスピーチと闘う
呉 光現お ぐぁんひょん)さん  (聖公会生野センター総主事)
報告者紹介
1957 年大阪市生野区「猪飼野」生まれ。
1983 年大阪市立大学文学部卒。
キリスト教関 係者が超党派組織、生野地域活動協議会での 10 年の活動を経て、1992 年から聖公会生野 センター主事、2007 年より総主事。2000 年から「在日本済州4・3事件犠牲者遺族会」 事務局長を経て 2011 年から会長。
NPO 法人精神障害者支援の会ヒット理事長。生野 NPO 法人連絡会代表。聖公会社会福祉連盟西部幹事。社会福祉法人愛信福祉会理事。生野地域 福祉アクションプラン推進委員会委員及び在日韓国・朝鮮人外国籍推進チーム長など。

報告2:「在日コリアンの権利獲得運動とわたし」
飛田 雄一(ひだ ゆういち)さん  (神戸学生青年センター館長)
報告者紹介
1950 年 神戸生まれ。
1978 年 3 月神戸大学大学院修士課程修了。
学生時代より、公益財団法人 神戸学生青年センターでアルバイトを始め、卒業後も今日まで、センターで多彩な社会活動をされ、 神戸の社会運動の生き字引となっている。
現在、館長。関西学院大学講師。在日朝鮮運動史研究 会関西支部代表、強制動員真相究明ネットワーク共同代表。
著書に『朝鮮人・中国人強制連行・強制労働資料集』(金英達と共著 1990~1994年 神戸学 生青年センター出版部)『心に刻み石に刻む―在日コリアンと私』(三一書房 2016 年刊)『現場 を歩く 現場を綴る―日本・コリア・キリスト教』(かんよう出版 2016 年)『旅行作家な気分― コリア・中国から中央アジアへの旅』(合同出版 2017 年刊)など多数

<第Ⅱ部> 質疑応答と意見交流

呉光現さんは、ヘイトスピーチをめぐる問題を多面的に分析してくださいました。「マイノリティが安心して暮らすには、その社会に対する信頼感がいる、まもってくれるという実感を持たないといきいきと生きられない」と述べられました。
飛田雄一さんは、大学でのベ平連活動に始まる自らの歩みと在日コリアンに関わる時代の動きを現在までたどってくださいました。
意見交流では、大学生をはじめ若い世代が人権問題を自らの問題として考えるためにはどのようなことをやっていけばいいのかなどが話題になりました。
懇親会でも話題は尽きませんでした。
報告者の 呉さん、飛田さん ありがとうございました。

【研究会の様子】

IMG_7249.jpg呉 光現 さんIMG_7264.jpg飛田 雄一 さんIMG_7288 2.jpg


IMG_7255.jpgIMG_7294.jpg懇親会でも話しは弾みました


8月25日 研究会

8月25日 研究会の報告

【案内文】2018.8.25研究会のお知らせの詳細LinkIcon

テーマ:「〜どう考えどう取り組むか 『特別の教科 道徳』と人権教育(パートⅡ)〜」

○開催日  : 2018年8月25日(土) 13:00~17:00
○場 所 :  大阪人権博物館(リバティおおさか)

本年より小学校において「特別の教科 道徳」が始まりました。来年度は、中学校において実施されます。
本会は昨年に引き続き、子どもの現実から学び、子どもの人権の実現をめざし、人権教育を基礎 にする立場から、「特別の教科 道徳」をどう考え、どう取り組んでいくかを、学び合いたいと思 います。
学期前の忙しい時期ではありますが、万障お繰り合わせのうえ、ご参加くださいますよう、お願 い申しあげます。

<第 I 部> 報 告
報告1:「中学校道徳教科書採択――より良い教科書を子どもたちの手に!
相可 文代(おうか ふみよ)さん(「子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会」)
報告者紹介
1950 年生まれ。大阪府元中学校教員。
社会科教員として、2001 年以降、「新しい歴史教科書をつくる会」などが作成した歴史歪曲・愛国主義的な歴史・公民教科書の採択に反対してきた。
退職後は市民団体「子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会」で教科書問題に取り組んでいる。

報告2:人権教育からみる戦後教育と道徳の教科化について
桂 正孝(かつら まさたか)さん(大阪市立大学名誉教授)
報告者紹介
1937 年生まれ。1967 年大阪大学大学院博士課程単位修得退学。同大学医療技術短大部助教授を経て 1979 年大阪市立大学文学部助教授、1985 年教授,2001 年名誉教授、宝塚􏰁形芸術大学教授歴任。1978 年日教組全国教研人権教育分科会共同研究者(30 年)、月刊『解放教育』(明治図書) 編集長、兵庫県教委の人権教育・防災教育の委員、大阪市社会教育委員、箕面市人権協会会長、歴任。現在、日教組人権教育推進委員会委員、兵庫教育文化研究所常任所員。
著書(監修・共編著)、『2020年―情報社会と教育改革』(勁草書房 2000年)、『子どもとつくるキャリア教育 学習プラン・実践集』(大阪府人権教育研究協議会、2009年)、「子どもの貧困と学力問題」(部落解放・人権研究所研究報告書No14、2009年)、「道徳教育論争―特設「道徳」教育を中心に―」(『教育と文化』59 号、アドバンテージサーバー、2010年)、「いま、『教育改革』をめぐる相克を読む」―人権・同和教育の視座から―」(大阪市立大学共生社会研究会『共生社会研究』No8、2013 年)、「人権教育の実践的視座とすじ道―人権としての『居場所』と『物語』づくりを―」(『いんふぉめーしょん 子どもの人権連』No151、2016年)

報告3:人権教育の視点を取り入れた『道徳』科
伊藤 悦子(いとう えつこ)さん (京都教育大学教授)
報告者紹介
1995 年より京都教育大学教員。教育学・教育社会学・人権教育。
著書に『被差別部落の大学卒業者の進路と結婚』(京都部落問題研究資料センター 2008年)、『部落史研究からの発信 第2巻近代編』(解放出版社 2009年)など、主にマイノリティの教育保障について歴史的・実践的に研究。昨年度は、「人権教育の継承と『子どもの貧困』―小・中学校教員調査を通じて」(『京都教育大学紀要』131 号)、相澤伸幸・神代健彦編『道徳教育のキ ソ・キホン 道徳科の授業を始める人へ』(ナカニシヤ出版)に人権教育の立場から執筆。

<第Ⅱ部> 質疑応答と意見交流

icon_new09_new01.gif【研究会の報告】
相可文代さんは、道徳の教科書の具体的な内容を豊富に紹介しつつ、どういう問題が潜んでいるのかを分析し、「愛国兵士づくり」のための道徳教育にしては、絶対いけないと訴えられました。また、小・中学校の道徳教科書の各社の採択状況の報告もありました。
最後に、「道徳教科書/もうひとつの指導案 ここが問題・こうしてみたら?」のウェブサイトの開設の紹介もありました。
https://www.doutoku.info(「人権を大切にする道徳研究会」で検索)

桂正孝さんは、まず戦前から戦後の日本の社会状況を辿り、その中で、自ら体験した「総力戦体制」下で少国民として天皇制イデオロギーが体にしみこむ教育の恐ろしさを話され、「改正」教育基本法や「道徳科」教育システムの確立などの現在の教育をめぐる状況の原型は、この戦前の時代にみることができると話されました。
最後に、道徳教育などの動きは、改憲の道へと直結し、地ならしであると警鐘を鳴らされました。

伊藤悦子さんは、改正のポイントとして、指導要領では、“多様、多面、など「多」という言葉の「多用」、価値の押し付けにならないように留意の強調、『考える道徳、議論する道徳』へ=他者との対話、話し合いの重視、問題解決学習的な学習の推奨” などと記述されていることを指摘されました。年間35時間の「教科書を教える」か「教科書で教えるか」という現場でのせめぎ合いの中で、人権の視点を入れた「道徳科」を実践していくための切り口を話されました。そして、そのための、教材開発の重要性を強調されました。

報告者の 相可さん、桂さん、伊藤さん ありがとうございました。

IMG_7724.jpg相可 文代 さんIMG_7731.jpgIMG_7748.jpg桂 政孝 さん
IMG_7759.jpgIMG_7779.jpgIMG_7790.jpg

3月30日 研究会

3月30日 研究会の報告

案内文】2019.3.30研究会のお知らせの詳細LinkIcon

テーマ:再び『障がい』とは何かを考える

○開催日  : 2019年3月30日(土) 13:00~17:00
○場 所 :  関西学院大学 大阪梅田キャンパス 1004教室

現在、教育の場での障がい者の位置はどう変化してきたでしょうか。
今年大きく問題化された不妊を強制してきた旧優生保護法は、1948 年には国会で反対意見もなく成立をみています。
障害者差別解消法が施行された同じ 2016 年には、同時に相模原障害者施設殺傷事件が起こっています。
前進と明らかな後退の現実。これからの教育の課題を見つめていきたいと思います。

<第 I 部> 報 告
報告1:予断と偏見を助長する制度的色覚検査の復古
荒 伸直(あら のぶなお) さん (日本色覚差別撤廃の会・会長)
報告者紹介
学生時代の70年代後半に「薬を監視する国民運動の会」へ、自治体就職後の80年代前半には「情報公開法を求める市民運動の会」へ参画。同時期より障害児の親の団体「先天性四肢障害児父母の会」にも入会、本人の立場で約30年間にわたり副議長など役員として会の運営および運動(原因究明 、いのちと権利)に参画。
関連論説に「何をあらためるのか母子保健 ~ 狙われる障害者 - 新生児モニタリングシステム点検」(『月刊地域闘争』・ロシナンテ社、86年4月号)、「原因究明と差別・優生」(先天性四肢障害児父母の会・『会報5号』1989年)ほか。 
色覚に生まれつき差異のある当事者の団体「日本色覚差別撤廃の会」へ15年ほど前に入会、副会長など役員として運動に参画。2016年より会長。

報告2:関西学院大学の手話教育について
松岡 克尚(まつおか かつひさ) さん (関西学院大学手話言語研究センター研究員)
報告者紹介
関西学院大学手話言語研究センター研究員、関西学院大学人間福祉学部の教員として「障害者福祉論」などを担当。阪神間の複数の自治体で手話言語条例策定に関わる。
著書に「ソーシャル ワークにおけるネットワーク概念とネットワークアプローチ」(関西学院大学出版会、2016)、 主な共著に 「支援の障害学に向けて」(現代書館、2007)、「障害者ソーシャルワークへのア プローチ――その構築と実践におけるジレンマ」(明石書店、2011)、「よくわかる障害学」 (ミネルヴァ書房、2014)、など。主な論文に、「障害モデル論の変遷とその課題について」関西学院人権研究(関西学院大学人権教育研究室),14 号,13-33、2010、「大学での障害学生支援における『障害モデル』に関する一考察」Human Welfare、9(1)、193-204、2016、「インペアメント文化のとらえ方とその可視化――障害文化、障害者文化との比較を通して」Human Welfare、 10(1)、79-91、2018、など。
関西学院大学社会学部社会学科卒業、関西学院大学大学院社会学研 究科社会福祉学専攻博士課程後期課程修了。

報告3:「障害者運動から見た50年
牧口 一二 さん(まきぐち いちじ) さん (認定NPO法人ゆめ・風基金代表理事)
報告者紹介
1937 年生まれ。1歳の時に脊髄性小児マヒ(ポリオ)にかかり、小2から松葉杖で通学。大阪美 術学校(現・大阪芸大)卒時、54 社もの就職試験で不採用となる。以後グラフィック・デザイナ ー、おおさか行動する障害者応援センター代表、障害者文化情報研究所長、誰でも乗れる地下鉄をつくる会代表、駅にエレベーターを!福祉のまちづくり条例を!大阪府民の会代表。NHK教育番組「きらっと生きる」のレギュラー司会者(1999~2009 年)。大阪市立大学・関西学院大学などで「障害者と人権」論の非常勤講師を歴任。
著書に『われら何を掴むか――障害のプラス面を考 える』(編集工房ノア 1976年)、『雨あがりのギンヤンマたち』(明石書店 1988年)、『何が不自由で、どちらが自由か――ちがうことこそばんざい』(河合文化教育研究所 1995 年)、『ちがうことこそ、ええこっちゃ』(日本放送出版協会 1996年)など多数。

<第Ⅱ部> 質疑応答と意見交流

icon_new09_new01.gif【研究会の報告】
荒さんは、まず「人権侵害」との批判を受けて2003年に文科省が廃止した学校での色覚検査制度が、ほぼ10年後に復活した経緯やその背景について話されました。そして、人の色覚は「十人十色」で、互いの差異・多様性を認め合う社会が必要であり、改めて、偏見や差別を助長する「制度的色覚検査」の撤廃の必要性を、様々な観点から分析してくださいました。

松岡さんは、難聴の種類(伝音性難聴、感音性難聴など)やその原因などの基礎的な知識についてまず説明をしてくれました。手話についても、日本の手話(日本手話)は、日本語とは異なる言語体系を持つ「自然言語」の一種であること、「日本手話」と「日本語対応手話」との違いなどについて、手話を交えて話されました。また、日本手話を「全学部・全専攻対象」の「語学科目」として開講している大学や関西学院大学での取り組みの紹介もありました。

牧口さんは、自身の生い立ちの紹介から話し始め、共同経営のデザイン会社設立の経緯や1970年の「青い芝の会」の運動に大きなショックを受けたことを話されました。とりわけ、1970年代中頃からの大阪の地下鉄にエレベーターを設置する運動のお話しは、その時代の熱気溢れる空気を感じさせるものでした。当時、牧口さんは「世の中が動き出すとはどういうものかわかった」そうです。最後に、相模原事件(2016年)に見られるように、障害者をめぐる現在の状況は、逆戻りをしている感じだと危機感を強く抱いていました。

報告者の 荒さん、松岡さん、牧口さん ありがとうございました。

IMG_9821 2.jpeg荒 伸直 さんIMG_9876 2.jpeg松岡 克尚 さんIMG_9865.jpegIMG_9904.jpeg牧口 一二 さん

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