活動方針
  活動経過(1)5月19日 講演会 「いじめと体罰」について考える」
      (2)9月1日 講演「歴史認識について~『従軍慰安婦』問題の現在」
         と シンポジウム テーマ:「演劇表現の力とは」
      (3)12月1日 研究会「被差別部落と演劇、芸能活動について」
      (4)3月30日 研究発表会・研究報告会
        「旅する民俗学者・宮本常一のなにが私達をとらえるのか
         -宮本の故郷周防大島・旅をとおしての「生活誌」・人権へのまなざし-」
        「同和教育・人権教育-私の歩いてきた道」
        「高校での実践から学び、大学につなぐ人権教育の授業」
      (5)2013年度活動のまとめ

活動方針

2013年度 活動方針
1. 総会を開催するに当って
 全国大学人権教育交流会は、全国の大学で人権教育について実践している方々の交流の場として2002年に創設されました。それから10年の間、毎年3回以上の交流や学習の場を進めてまいりました。そして、2012年5月20日に、財政基盤の確立、そして大学関係者と人権教育に関心のある方がたとの幅広い交流を目指して組織化し、設立するための総会を開催しました。また、事務局を関西学院大学人権教育室に置き、組織的な運営が可能となりました。
 昨年は、4回の、研究会または研究集会を開催することができました。そして、初めて会員発表会を実施し、ホームページを開設しました。皆様の協力の下、ここに2013年度の総会を迎えることが出来ました。
国内外の人権課題は山積しているだけではなく、多岐にわたって課題として取り組まれるようになってきました。他方、人権そのものの内容についても、一人ひとりが考え、向き合うことがより重要となってきました。その中にあって、本会は、人権教育のこれまでの蓄積を生かしながら、新しい人権教育の創造を目指して活動していきたいと考えています。

2. 2013年度 活動方針
1.活動方針
(1)本会はこれまで、人権教育についての、従来の取り組みの再構築、隠れた課題や方法の引き上げ、新たな課題や方法の構築、これら3つの視点を底流において活動してきた。2013年度においても、この活動方針を基本において、人権教育の構築を目指していく。
(2)これまで本会に協力したいただいた個人や団体との一層の連携と、人権教育に関心をもつ、個々人、各団体との新たなネットワークの拡大を目指す。ホームページの積極的な活用と、研究会等の開催について、協力や共催等の方法も考慮に入れていく。
(3)情報発信活動
・ホームページ等による情報の発信
 今年はこの課題により取り組みたい。
・会員の相互の意見交換にも取り組みたい。
2.活動計画
5月19日(日) 総会と講演会
        関西学院大学大阪梅田キャンパス 1004教室
        講演会:「いじめと体罰」について考える
           ・ 温井史郎さん(桃山学院中学校高等学校校長)
             「中学・高校の現場では」
        ・園田雅晴さん(大阪教育大学)
         「『いじめ問題』と教育実践の基本課題
        ・司会 出水正一(関西大学)下橋邦彦(教師駆け込み寺主宰)
9月 1日(日)シンポジウム:「演劇表現の力とは」
        関西学院大学大阪梅田キャンパス 1405教室
     報 告:・村上弘光さん(龍谷大学)他 龍谷大学の取り組み
         ・山脇立嗣さん(劇団あしたの会)
12月    未定
3月     未定(教育実践の交流と会員の発表等)

5月19日 講演

5月19日 記念講演会

【案内文】2013.5.19園田さん、温井さんの講演会のお知らせの詳細LinkIcon

テーマ:「いじめと体罰」について考える
  ○開催日  : 2013年5月19日(日) 13:30~17:00
  ○場 所 : 関西学院大学大阪梅田キャンパス K.G.ハブスクエア 1004教室

園田 雅春 さん 大阪教育大学特任教授)
「『いじめ問題』と教育実践の基本課題」

<講演概要>「いじめ」という人権侵害事象の背景にあるものは何かを探りながら、
      それらの克服のために学校教育の実践課題としていま何が求められるのかということについて、
      「現場の事実」「子どもの事実」に即して報告・提案したい。

温井 史朗 さん 桃山学院中学校高等学校校長、学校法人桃山学院常務理事、元関西いのちの電話相談員
「中学・高校の現場では」

【講演会の様子】

DSC01682.JPG園田雅春さんDSC01696.JPG温井史朗さんDSC01700.JPG懇親会

9月 シンポジウム

9月1日(日)講演会・シンポジウム
   講演      : 11:00 ~ 12:30    
   シンポジウム  : 13:30 ~ 17:00
   会場      : 関西学院大学梅田キャンパス1405教室

  【案内文】2013.9.1講演会・シンポジウのお知らせの詳細LinkIcon

講演会「歴史認識について〜『従軍慰安婦』問題の現在」
講師 上杉 聰さん(大阪市立大学 人権問題研究センター)

1985年よりアジア太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ心に刻む会を主催してきた。日本の加害の抹消に抗して、その責任を一貫して追求してきた。「従軍慰安婦」問題の過去と現在を見つめ、これまでの研究の検討を通して問題点を提示する。現在、日本の戦争責任資料センター事務局長。著書に『明治維新と賤民廃止令』、『脱ゴーマニズム宣言」。

シンポジウム  テーマ:「演劇表現の力とは」

知的ハンディを持ったみなさんを学生がサポートしたお芝居創りの11年間とは」

加藤 博史さん(龍谷大学短期大学部)

1972年から14年間、精神科病院に勤務後、98年から龍谷大学短期大学部教授。現在、社会福祉法人・京都光彩の会理事長、京都精神保健福祉施設協議会長、京都市障害者施策推進協議会長、京都外国人高齢者・障害者生活支援ネットワーク・モア共同代表などを兼務。
報告内容:知的障碍者対象のオープンカレッジは2002年度に開講した。通年の正課授業(「障がい者学習支援特講」、「音楽療法特講」、「演劇療法特講」)として、組織をあげて取り組んでいる大学は本学のみである。
 受講生は約40人。毎年度15回通学、4年間で卒業とし、修了証を学長名で出している。
 特色と意義は、①一般学生であふれる平日に通学する②学生とペアとなることで、心理的距離の遠近、葛藤の深化や克服がひとつの物語となる③多くの教員が関わることで「大学における真の知とは何か」との問いを共有できる④大学の風景に知的障碍者が存在して当然という文化が定着するーなどがある。
 演劇の発表会は地域住民にも公開。観劇することで地域住民も感化され、プラスの相互変容が始まる。このほか、学生の変容も見逃せない。次の学生の言葉はそれを語っている。「私に知的障がいの叔父がいて、小さいころからびくびくしていた。ペアになったKさんのおかげで、偏見をもっていたことを叔父に謝りたいと思った。Kさん、ありがとう」。

森本 景文さん(劇団「未来」代表)

茨木市教育委員会で社会教育行政に36年間従事する一方、関西芸術座付属演劇研究所で学ぶ。2002年度から11年間、「演劇療法特講」の講師として、ふれあい大学受講生の出演する演劇の演出を担当。現在、劇団「未来」代表、日本演出家協会員。
報告内容:2講時の『演劇療法特講』は年20回。90分の授業時間をフルに使って、1本のお芝居を創りあげてきた。知的ハンディのある受講生に1人または複数の一般学生(サポート学生)を当てるが、お互いに愛称を名乗らせ、それで呼び合うようにしている。お芝居の練習の前に上手なコミュニケーションの取り方、発声練習から指導するが、その成果は毎年12月の第1水曜日に学友会館ホールで開く発表会で披露してきた。

村上 弘光さん(龍谷大学短期大学部)

京都新聞社編集委員など経て、2001年度から龍谷大学短期大学部教員。02年度から退職後の13年度まで、ふれあい大学「演劇療法特講」の受講者で上演する脚本を担当。現在、NPO法人・城陽市の精神保健福祉をすすめる会「野の花」理事長。
報告内容:12月の公演が終わると、加藤、森本両先生と来年度の演目の選定に入る。新学期に受講生とサポート学生の顔ぶれの決定後、脚本に着手するが、個々の受講生の障害の程度と森本先生が把握された受講生、並びにサポート学生の個性を生かすためにセリフなどを何回も書き直しすることもある。毎回、教員にも出演していただいているが、教員と一般学生との間に親近感が生まれるなど、思わぬ副産物もある。

聞こえない人と共に演劇を作るということ」
山脇 立嗣さん(劇作家)

劇作家。1995年、発起人の一人として「劇団あしたの会」を結成。ろう者と共に作品を創り続けている。第2回京都シネメセナ映画「アイ・ラヴ・フレンズ」原作担当。ろう者を描いたオリジナル戯曲が部落解放文学賞、北海道戯曲コンクール、沖縄市戯曲大賞などを受賞。
概要:
『聞こえない人に演劇を観てもらいたい』…日本語の演劇公演に日本語の字幕スーパーを投影する試みは全国的に前例がなく、試行錯誤の中、アドバイザーとして演劇好きの「ろう者」と出会ったのが今から20年前。ほどなく劇団あしたの会を結成。『聞こえない者と聞こえる者が共に舞台に立ち、聞こえない観客と聞こえる観客が共に楽しめる芝居を創ろう』をモットーに、今日まで劇団活動を続ける。現在の実働団員数は12名。その半分がろう者や難聴者である。
旗揚げに至る経緯、完成台本への道のり、様々な上演スタイル、スタッフ会議、手話セリフへの翻訳作業、そして舞台本番の役者の表現(映像)などを紹介。一団員(私)の視点ではあるが、ろう者と聴者が混在し間もなく結成20年を迎える日本でも稀有な劇団の日々を、講演を通じてお伝えすることも必要ではないかと最近では考えるようになった。あしたの会結成以前は様々な劇団で音効や音楽制作を担当していた私が、如何にして音と向き合うか想いを巡らせた日々でもある。

【講演会・シンポジウムの様子】

P1030496.jpg     上杉聰さんP1030506.jpg     加藤博史さんP1030521.JPG(左)森本景文さん(右)村上弘光さんP1030537.JPG     山脇立嗣さん
P1030518.JPG  演劇の様子を映像でP1030543.jpg      懇親会

【講演会の報告】上杉 聰さん「歴史認識について〜『従軍慰安婦』問題の現在」

午前中の講演会は、上杉聰さんに「従軍慰安婦」問題についてお話しいただきました。お願いした演題には、〈歴史認識とは、私たちが今をどうとらえるかという問題である〉というメッセージがこめられています。じっさい、「従軍慰安婦」問題とは、慰安婦制度の被害者となった方々にたいして私たちが今、どのように応答するのかという、まさしく現在の問題にほかなりません。上杉さんは、橋本大阪市長の発言への批判から出発しながら、この問題が、性暴力を犯罪として認定しようとしない社会意識の水準、政治家や研究者のあいだにおける歴史修正主義の動きの水準、そして、戦争被害についての賠償等請求権を国対国のみならず国家対個人の関係にまで拡大させる新しい国際法の形成の水準といった、きわめて多面的な現象であることを説得的に示されるとともに、「日韓両政府が、日本の植民地支配が韓国に与えた影響に関し、持続的に対話するための機構」を設置することによる根本的な解決の道を提案されるなど、この問題にたいして私たちがこれから考えていくうえで、貴重な示唆をもたらしてくださいました。

12月 研究会

12月 研究会

【案内文】2013.12.1研究会のお知らせの詳細LinkIcon

○開催日時:2013年12月1日(日)13時30分~17時00分

○場  所:関西学院大学 大阪梅田キャンパス 1406号教室(14階)
      大阪市北区茶屋町19-19 アプローズタワー内

○内容について
2013年9月1日に、「演劇表現の力とは」というテーマでシンポジウムを実施しました。そこでは、大学での、学生と知的障碍をもつ人が協働して演劇に取り組む活動、また聴覚に不自由をもつ人ともたない人が協働して演劇を通して自分たちの世界を表現する活動について、報告を受けました。このような両者の関係が新たな世界を生み出す力となっています。今回は、被差別部落と演劇、芸能活動について報告をしていただき、それらが生活や解放運動にどのような影響をもってきたのか、を考えて見たいと思います。

  (1)「明治・大正演劇と西光万吉~~全国水平社と演劇水平社、水平社芸術連盟」
      高橋 文義さん(歴史学者)

  (2)「被差別部落と芸能」
      太田 恭治さん
       (元差別とたたかう文化会議事務局(1975年)、元人権博物館学芸員(~2009年)。
        現在、“あとりえ西浜”主宰、花園大学非常勤講師)

【研究会の様子】

DSC01982 - バージョン 2.JPG    高橋文義さんDSC01991.JPG   太田恭治さんDSC01993.JPG

3月 研究発表会・研究報告会

3月 研究発表会・研究報告会

【案内文】2014.3.30 研究会のお知らせの詳細LinkIcon

○開催日時:2014年3月30日(日)11時00分~17時00分
○場  所:関西学院大学 大阪梅田キャンパス 1406号教室(14階)
      大阪市北区茶屋町19-19 アプローズタワー内

<第一部> 会員による研究発表会   11:00-12:30

テーマ:「旅する民俗学者・宮本常一のなにが私達をとらえるのか
     -宮本の故郷周防大島・旅をとおしての「生活誌」・人権へのまなざし-」
発表者:下橋 邦彦さん(教師駈け込み寺主宰)

発表概要
宮本常一は、1907年8月1日、山口県周防大島に生まれた。10歳まで祖父・市五郎の手元で育てられた。父・善十郎、母・マチの長男。浜辺の農家に生まれ、終生旅に次ぐ旅をしながらも、故郷を離れることはなく、「農民」であり続けた。が、大阪には縁の深い人で、16歳で大阪にいる叔父の世話で大阪逓信講習所に入り、翌年大阪高麗橋郵便局に勤務のかたわら市の内外を歩きまわる。天王寺師範2部、のち専攻科に学び教員資格を取得。大阪泉南泉北の小学校勤務(30歳頃まで)。渋沢敬三の強い要請により上京、アチックミューゼアム(のちの日本常民文化研究所)に入り、23年間そこで食客暮らしをしながら、全国を歩き回り、その土地土地の古老などの話を聴き、本にまとめる仕事を続ける。・・・ざっとこういった経歴が前半生。自伝的な書『民俗学の旅』の「はじめに」で宮本は書いている。
――私が民俗学という学問に興味を持つようになったのは私の育った環境によるものであると思う。幼少のときから十六歳まで、百姓として生きてゆく技術と心得のようなものを祖父母や父母から、日常生活の中で教えられた。そしてその後の私の生活は幼少のときの親身の人たちから教えられたことの延長として存在しているように思う。――
 その旅から得られた収穫は、未来社から40数冊の書物として刊行され、彼が旅の途上や故郷を写した二万枚に及ぶ写真として今日に遺されている。「旅する巨人」と称されるだけあって、その業績は多岐に及ぶが、日本文化の形成とは?を追い求め、「いくつもの日本」を、常民の語りを通して立証していった。とりわけ、西日本にその重点を置いて考察をしており、柳田民俗学をはるかにしのぐ、新しい地点にたつ民衆の「生活誌」として明らかにしていったことは、余人の追随を許さないし、多くの分野の研究者・文学者・思想家に与えた影響は大きい。とりわけ、私が心魅かれるのは、名著『忘れられた日本人』に収録された古老の語りである。学会では少数派であったが、優れた歴史学の世界を築いた網野善彦が、宮本を評して《下積みの世界に注がれた目》と書いているが、名もない「忘れられた」人に注がれたまなざしの温かさ、そこから汲みだせるものを汲みつくしたいという熱情には、瞠目すべきものがある。そうした彼のまなざしは、幼少体験、その極貧生活にまつわる家族の「物語り」によって培われたものであるように思われる。かれの教師体験にも言及しつつ、そのあたりを報告し、みなさんと考えてみたい。
講師紹介
高校・大学教員を50年にわたり経験してきた。いまは現職教員のサポートをやっている。そのための〈学校訪問〉を続けている。この4月から、大学教員に復帰する予定で、月給取りになる恐さを自覚しながら、学生と向き合っていきたい。

<第二部> 研究報告会   13:30-17:00 
テーマ:「同和教育・人権教育-私の歩いてきた道」  13:30‐15:00
報告者:林 力さん(同和教育・人権教育運動家)

講師紹介
1924年生まれ。福岡県の識字運動、同和教育・人権教育運動家。1961年創立の福岡県同和教育研究協議会の創立者(26年間会長・現在顧問)。全国同和教育研究協議会副会長などを歴任。2000年まで九州造形大学や九州産業大学教授(人権教育論)。九州大学を2013年に退任するまで、多数の九州の国公私立大学の非常勤講師。現在、ヒューマンライツ福岡県民会議事務局長、国立フィリピン・ミンダナオ大学名誉博士。ハンセン病に学ぶ会会長。福岡県人権研究所顧問。全国で講演活動を活発に展開されておられる。著書に『解放を問われ続けて』(1974年明治図書)『「癩者」の息子として』(1988年明石書店)『若き教師たちへ――「同和」教育運動に学んだこと』(1988年解放出版社)『人権百話』(解放出版社 1993年)『父からの手紙』(1997年草風館)『山中捨五郎記――宿業を越えて』(2004年皓星社)など多数。長い同和教育・人権教育の歩みを、優しく、しかし、深く話される。

テーマ:「高校での実践から学び、大学につなぐ人権教育の授業」 15:10‐16:40
報告1 報告者:山下 勉さん(大阪府立芥川高等学校)

発表概要
「より良き社会の形成に向けて行動する力の育成」
 授業や部活動が現実社会と繋がり、様々な人々の生き方と出会った時、生徒たちは自分を見つめなおす。そして、今まで知り得なかった現実の様々な課題を知り、それを理解しようとする。それは主体的な学びである。主体的な学びは共感を伴った理解へと深化し、行動の原動力となる。生徒たちが教師のサポートを得て、社会に向けて行動した実践を報告する。
講師紹介
現在、大阪府立芥川高等学校社会科教員。府立高校に40年間勤務。芥川高校では、学校設定科目の「グローバルコミュニケーション」で関西大学総合情報学部と連携して、世界に開かれた教室を目指す参加体験型の授業を担当。また、和太鼓部を創部し、地域に根ざしたボランティア演奏活動、海外公演、チャリティコンサートなどに取り組む。

報告2 報告者:出水 正一さん(大阪府立芥川高等学校、関西大学)

発表概要
「参加型学習を取り入れた大学での授業『人権教育論』の実践」
大学での授業「人権教育論」について、その手法に焦点を当て、その概要や学生の感想を報告する。グループワークでのディスカッションやロールプレイ、大阪市内各地のフィールドワーク、ゲストスピーカーの肉声等、そこから、自分の中で当たり前と考えていたことを問い直す学生の姿がある。対話を通して学習者が自ら気づきを得る「課題提起型教育」を追求する高校での取り組みに学び、大学の中で、それをどう生かし「人権教育」に繋いでいけるのか考えてみたい。
講師紹介
長年、大阪府立高校社会科教員として勤務。その間、「異文化理解」や「総合学習」など教科書のない授業に意欲を燃やす。また、人権学習でも「参加型」の授業の実践に取り組む。朝鮮文化研究会や「障害」者問題研究部の顧問もする。現在、関西大学で「人権教育論」も担当する。

【参加者の感想】白井俊一様(人権ワークショップ研究会「世話人」)より感想が寄せられました。ありがとうございました。

(白井通信 2014.4.1 より)
日曜日の研修会ありがとうございました。どれも刺激的で勉強になりました。
最近の私の関心事は、民主党の惨敗以来、「われわれはどこで道を踏み外したのか?」「“革新”を名乗る我々の陣営がなぜ革新・確信できないのか?」「解放運動、労働運動、教育運動の側が、なぜ自己が追い詰められていっている惨状に対して、総括すらできないのはなぜなのか!」「飛鳥会事件ですら総括できないのはなぜか?」「われわれは、人間解放を唱えながら何を欠落させてきたのか!」ということです。
林力先生は、一言、「同和教育を表面的に取り組んで来たものが、官僚化した!」と看過されていました。問題はその「官僚化」の中味を己の責任において解明することにあると思います。
部落解放、および同和教育は、世の中の価値観(どっぷりと習慣化したーわれわれの中にもあるー世間常識)の転換を迫ったものであるはずでした。つまり、「被差別の側に立ちきれるのか!」「被差別民衆を支援する」ということ・・・。しかし、この論理の立て方にこそ、不十分さがあったように思います。人権侵害、差別は、すべての人間の「人間性そのものをぶっ潰すものだ」という視点、差別の当事者性は、すべての人間であるということ。つまり、一人の人間の中に「差別・被差別・傍観・無関心」のすべての要素をー気づかないままにーからみあわせて保持しているということの自覚こそが必要であると考えています。しかし、己の社会的立場を自覚したとしても、差別社会の中で生きるためには、強いものに巻かれながら抵抗することすらできない(自分に生きる自信がないので、飯が食えないという恐怖に支配されている)私がいます。宮本常一、林先生たちは、どういう状況になっても、「自分の生き方を貫き通せる覚悟」があるようで、その覚悟はまぶしいばかりです。運動の役員―私のこと―が飯を食うために、「専門家面」して体制内化してしまった。これが、林先生がいうところの「官僚化」ではないかと思います。

「世の中―近代社会―の常識を支える価値観(生産力万能主義+弱肉強食+利己主義)」を根底から揺さぶる思想は何なのか? 直感的には、格差是正だけではないように思います。本源的な意味でのエコロジー(生命体としての人類、動植物との共生)、ジェンダー(人間を再生産する役割としての子育て・介護・医療などを女性に押し付け、搾取したこと)、そして、知的労働(理性)による支配を転覆させる「現場主義、私たち常民の復権」にあるのではないかと考えるようになっています。
そうした意味において、日曜日の(1)宮本常一の生き方、(2)林先生の同和教育論、(3)芥川高校の人権の学びを社会参加につなぐ話のすべてが、人間一人ひとりの思いをていねいにすくい上げながら、生活現場でもがいていくことのすばらしさを強調されていたように思います。そして、その中には共通して「人間の可能性を信頼する、人間・命そのものを大切にする」という視点が貫かれていたようです。ジェンダー(性抑圧)の視点が宮本常一の中にあるということは新鮮な驚きでした。芥川高校の取り組みにもその視点がありました。林先生の話は短かったので聞けなかっただけなのでしょう。
宮本の『忘れられた日本人』と『女の民俗史』が、今、届きました。読んでみます。
また通信します。

【研究発表会・研究報告会の様子】

DSC02139.JPG下橋邦彦さんDSC02155.jpg林力さんDSC02161.JPG山下勉さんDSC02171.JPG出水正一さんDSC02149.jpg林さん(中央)を囲んで記念撮影DSC02162.jpg生徒の作品を披露する山下さん

2013年度活動まとめ

1.活動報告
   講演会(2回)、研究会(3回)とシンポジウム(1回)を開催しました。そして、会員発表会を実施しました。

活動内容

第32回 2013年5月19日 関西学院大学大阪キャンパス1004号教室で、総会と記念講演会を開催しました。総会は,11:00~12:00まで。2012年度の活動報告と決算、2014年度の活動方針と予算、そして世話人の選出と役割分担について、等の議案を討議し、会員の了承を得ました。
 13:30~17:00まで、記念講演会を実施しました。テーマは「『いじめと体罰』について考える」です。温井史郎さん(桃山学院中学校高等学校校長、学校法人桃山学院常務理事、元関西いのちの電話相談員)から、「中学・高校の現場では」という題で、「教育現場で抱える問題を提起し、解決の糸口を提示する」という内容について話をしていただきました。その後、園田雅春さん(大阪教育大学)から、「『いじめ問題』と教育実践の基本課題」を題で、「『いじめ』という人権侵害事象の背景にあるものは何かを探りながら、それらの克服のために学校教育の実践課題としていま何が求められているのかということについて、『現場の事実』と『子どもの事実』に即して報告・提案」していただきました。

第33回の講演会・シンポジウムは、2013年9月1日、関西学院大学大阪梅田キャンパス1405号教室で開催しました。11:00~12:30まで、上杉聡さん(大阪市立大学)に、「歴史認識について~『従軍慰安婦』問題の現在」という題で講演をしていただきました。内容は、1985年よりアジア太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ心に刻む会を主催してきた。日本の加害の抹消に抗して、その責任を一貫して追求してきた。「従軍慰安婦」問題の過去と現在を見つめ、これまでの研究の検討を通して問題点を提示する、というものでした。
 12:30~17:00まで、「演劇表現の力とは」というテーマでシンポジウムを行いました。まず、龍谷大学短期大学部の知的障碍者対象のオープンカレッジの報告をしていただきました。オープンカレッジは、通年の正課授業(「障がい者学習支援特講」、「音楽療法特講」、「演劇療法特講」)として、11年間実践されてきました。報告は「知的ハンディを持ったみなさんを学生がサポートしたお芝居創り11年間とは」というテーマで、加藤博史さん(龍谷短期大学部)、森本景文さん(劇団「未来」)、村上弘光さん(龍谷大学短期大学部)の順に話をしていただきました。その後、山脇立嗣さん(劇団あしたの会)に、「聞こえない人と共に演劇を作るということ」という題で報告していただきました。『聞こえない者と聞こえる者が共に舞台に立ち、聞こえない観客と聞こえる観客が共に楽しめる芝居を創ろう』をモットーに、今日まで劇団活動を続けてきた。「ろう者と聴者が混在し間もなく20年を迎える日本でも稀有の劇団の日々」の活動について語っていただきました。

第34回の研究会は、2013年12月1日、13:30~17:00まで、関西学院大学大阪梅田キャンパス1406号教室で実施しました。今回は、9月のシンポジウムに引き続き演劇活動に焦点をあて、被差別部落と演劇、芸能活動、そしてそれらが生活や解放運動にどのような影響をもってきたのか、を考えてみることにしました。報告は、高橋正義さん(歴史学者)に「明治・大正演劇と西光万吉~全国水平社と演劇水平社、水平社芸術連盟」という題で、そして太田恭治さん(花園大学、元人権博物館学芸員)に「被差別部落と芸能」という題で報告していただきました。
高橋さんは、水平社運動は創立当初、今日では想像できないほどの衝撃を日本社会に与えた。マスコミも応援し、大きな紙面を割いた。その高揚の中で、中心的指導者のひとり、西光万吉は演劇に注目し戯曲を執筆した。西光の書いた作品は、観客の鼓動と一体化した、燃えるような演劇となって各地を経巡った。また大河内伝次郎などを生んだ第二新国劇でも、西光は戯作者として大きな位置にいた、と話されました。また、太田さんは、日本の被差別者のなりわいは、日本文化の伝統の根幹にかかわっている。能・狂言・歌舞伎・浄瑠璃・音曲をはじめ、あらゆる分野に及んでいる。現在もなお、旅回りの劇団をふくめ民間芸能に大きな基底を及ぼしている、と述べ、多彩・多様な被差別部落の芸能の過去と現在について報告されました。

第35回の研究発表会・研究会は、2014年3月30日に、関西学院大学大阪梅田キャンパス1406号教室で開催しました。11:00~12:30までは、会員による研究発表会で、下橋邦彦さん(教師駆け込み寺主宰)が「旅する民俗学者・宮本常一のなにが私達をとらえるのか-宮本の故郷周防大島・旅をとおしての『生活誌』・人権のまなざし-」という題で報告しました。下橋さんは、宮本常一が「旅する巨人」と称するだけあって、その業績は多岐に及ぶが、日本文化の形成とは?を追い求め、「いくつもの日本」を常民の語りを通して立証していったと述べ、宮本の生き方と業績について力強く語っていただきました。
13:00~15:00までは、林力さん(同和教育・人権教育運動家)から、「同和教育・人権教育-私の歩いてきた道」と題で話をしていただきました。
15:10~16:40までは、「高校での実践から学び、大学につなぐ人権教育の授業」というテーマで、山下勉さん(大阪芥川高等学校)に「よりよき社会の形成に向けて行動する力の育成」という題で、出水正一さん(関西大学)に「参加型学習を取り入れた大学での授業『人権教育論』の実践」という題で、報告していただきました。
山下さんは、「授業や部活動が現実社会と繋がり、様々な人々の生き方と出会った時に、生徒たちは自分を見つめなおす。そして、今まで知り得なかった現実の様々な課題を知り、それを理解しようとする。それは主体的な学びである。主体的な学びは共感を伴った理解へと深化し、行動の原動力になる」と述べ、参加型学習の意義と実践について報告されました。出水さんは、学習者が自ら気づきを得る「課題提起型教育」を追求する高校での取り組みに学び、大学での授業における、グループワークやフィールドワークを通して、自分の中で当たり前と考えていたことを問い直す参加型学習の実践について報告されました。

2. ホームページ、フェイスブックについて
 2013年3月25日に、リニューアルしたホームページを開設し、主にイベントの案内や活動の報告をしてきました。「あゆみ」で2001年からの活動の概略を、「2012年度・2013年度活動」でその内容も確認できます。
 また、2013年8月24日にFacebookも開設しました。当初は、会員対象でしたが、2014年2月8日から「公開」としました。Facebookは容易に更新ができるため、よりタイムリーに情報を提供することができ、活動の雰囲気も伝わりました。
 ホームページ、Facebookと共にもっと皆様にアクセスをお願い致します。特に、Facebookは、双方向の交流が簡単にできますので、会員間やそれを超えた人びととの意見交換の“場”として活用できるようにしていきたいと考えています。


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